【 新市場創造に挑む】エンリッション 柿本優祐社長
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大学生の視野と進路の裾野を広げる『知るカフェ』。大学構内で、そしてグローバルで展開を加速
株式会社エンリッション

インタビュー

慶應義塾大学三田キャンパス正門すぐ近く、ビルの2階に通じる階段を、学生と思しき若いグループもしくは個人が絶え間なく行きかう。その目的の先にあるのは、『知るカフェ』の慶應義塾大学前店。中に入ると、開放感あふれる明るい店内では、勉強をしたりくつろいだり、グループで話に興じたり・・・・・・、授業の前後や合間を縫って集まった学生で席の殆どが埋まり、大きな賑わいを見せていた。

■ 同志社大学前からスタートし、現在は国内海外に12店舗を展開

『知るカフェ』とは、株式会社エンリッションが手掛ける大学生専用の無料カフェのこと。「未来の可能性を広げるために、大学生活の新たな過ごし方を知る、大学のそばのもう一つの大学」をコンセプトに、2013年12月にスタートした新事業だ。

第1号店は、代表である柿本優祐の母校・同志社大学近くにオープンし、以降関西・首都圏の主要大学すぐ近くに次々に開設してきた。近年はインドにもオープンするなど、グローバル展開にも注力し、創業から僅か2年半で、計12店舗を運営する規模に育っている。

『知るカフェ』の特徴は、学生が無料で毎日気軽に利用できるスペースであること。コーヒー、紅茶、オレンジジュースなど飲み物は全て無料。定期的に開催されるイベントにも無料で参加でき、大学のOBなどの社会人と、気軽に話をできる場になっている。前述の「慶應義塾大学前店」の場合だと、席数は56あり、多くの学生が集まりやすい空間になっている。

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一方、その”無料提供”の原資は、企業からのスポンサー収入で賄う。『知るカフェ』は全て、有力大学の”すぐ目の前”にピンポイントで出店していることが強み(カフェ利用者の90%以上が当該大学の学生)で、企業から見ると明確にその大学の学生にアプローチができるのが大きな魅力だ。そういった採用効果やブランディングへの期待が、スポンサードの意義づけになる。

しかし企業のお金で回していながらも、「企業の都合を優先にしていない」ところが、同社の事業の大きなポイントだ。

多くの場合、”企業スポンサード”から成るコミュニティは、例えば採用イベントの集客支援など、「学生をどうスポンサー企業のほうへ引っ張っていくか」の作業に追われがちだ。しかし、企業の都合に合わせた運営をしていたら、学生はすぐに察知して離れていく。すると結果的に企業にとってもイメージがマイナスになってしまう。そういうジレンマを併せ持つ。

その点に関して柿本は、「目先の効果で一喜一憂するのではなく、中長期で学生といい関係を作っていきたいという企業とともに運営したい」と考えており、それが結果として、現在130社ほどから成るスポンサー企業の殆どが有名大企業という現状に繋がった。

もちろん、抽象的なメリットばかりでもない。例えば『知るカフェ』各店では頻繁に企業イベントを開催しているが、この会場貸しもスポンサー特典だ(主催は『知るカフェ』ではなく各企業)。この時、アプローチしたい大学毎に、そのすぐそばの通学導線上でイベント会場が持てること。そして多くの学生が、日常的に集まる習慣がついている(オフラインコミュニティが形成されている)場所を利用できることは、他では代替しにくい大きな強みとなっている。

■ 社会の先輩100人全員が、”それはやるべきだ”と言ってくれたビジネスモデル

『知るカフェ』着眼の原体験、柿本はそれを「大学生の時のスノーボード旅行にある」と説明する。当時柿本は、社会人のいるスノーボードサークルに所属しており、京都から長野へ仲間数人と車で向かう6時間の車中は、往々にして社会人の先輩の”働くこと”についての話になった。それは1シーズン2~30回ほどもあり、共有した時間は膨大なものとなった。

「その時に聞いた話をもとに、先輩が働く企業の資料請求をしてみたり、会社説明会に行ってみたり……。好奇心のまま1年生のころから、いろんな企業について調べていました」

しかし就活が始まり、周りの同級生と話をして気付いたのが、「みんなはその時になって初めて企業について調べ出すことが殆ど」だということ。そして「それでは、しっかり自分の進路の適性を考える時間が無いのではないか」と疑問を感じた。

いま『知るカフェ』の会員は、半分近くが1~2年生だという。柿本が学生時代のころに思い描いていた、「1~2年生のころから、キャリアを考えたり企業関係者に触れることができるオフラインコミュニティ」が見事に実現されてきたと言えるだろう。

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ただ学生の時代は、これらのイメージはまだ頭の中だけのことに留めていたようだ。「学生の情熱だけで動かすのではなく、まずはしっかりビジネスや社会のしくみを学んでから」と就職を決意し、「もっとも短時間で大きく成長できそう」なワークスアプリケーションズを選んだ。

ここでの経験は、今の経営に大きく役立っているという。その最たるものが、「大企業への営業はどうあるべきか」その試行や成果を身を持って学んだことだ。またその後の展開の中で、同社の牧野社長に協力を仰ぐこともできた。

2年半ほどの同社での勤務後、かねてから温めていた『知るカフェ』ビジネスの立ち上げに向かうことになる。全くゼロからの挑戦ではあったが、躊躇はなかったようだ。

「それは、起業するまでに100名ほどの経営者や社会人を訪ね、構想についてアドバイスをいただきましたが、全員が全員”やったほうがいい”と、可能性を感じ後押ししてくれたからなんです」

■ 経営の生命線は”立地”、そしてサービスの質

『知るカフェ』の開業にあたっては、資金不足を補うために「店舗ができる前に企画書だけで」お金を集めた。25社の協賛を集めるために、その約10倍の企業にアプローチしたというが、初めて聞く未知なる事業に、大企業が1/10の確率でスポンサーを受諾したのは、かなりの高確率と言えるだろう。その後の加速的な展開を予感させる立ち上がりだったと言えるかもしれない。

この事業モデルの特筆すべき点は、店舗オープン前にすでに事業予測が立っていることだ。柿本によると「2年先まで、売上げ利益すべて計算が立つ」という。飲食店としては考えられない収支構造だ。

そのモデルを高いレベルで機能させるためにも、柿本がこだわったのは、何よりも立地だった。とにかく大学のすぐ前、通学の導線上であること。「学生が集まるスペースは、”多くの学生にとって”便利な繁華街に用意されることが多いですが、企業側はそれを望んでいない。”希望する大学の学生だけ”に集まってほしいのです」

参加する学生側にとっても、大学のすぐそばに同じ大学の学生ばかり集うことは”キャンパスの延長線上”の存在になる。”意識が高いかどうか”に関係なく、誰もが手軽に立ち寄れる場所になる。それは柿本が目指すビジョンを叶えるためにも重要なことだった。

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店舗の運営にあたるのは全て学生だ。交通の便が良いこと、同じ大学の多くの仲間と触れられること、そして社会人との交流や企業の情報を得られることなど、学生にとって魅力的な要素がふんだんに溢れ、応募倍率も非常に高いものになっているという。すでに『知るカフェ』で働くことが、一種のステータスになりつつあると言え、当然、接客の質は驚くほどに高い。

興味深いのは、その質の高さを同社の独自のビジネスモデルが後押ししていることだ。

『知るカフェ』は全てがスポンサー収入で賄われており、学生がお金を出す必要が無いので、飲食店でありながらレジが無い。「それによって、働く学生たちの安心度が高まります。デリケートな作業が軽減されるため、サービスの充実に特化することができます。ちなみに店舗で出すコーヒー豆は、かなり高いレベルのものを使っていますよ」と、柿本は笑顔を見せる。

■ 大学構内への出店開始で、柿本が目指す”あるべき姿”にさらに近づく

「この秋にはまたスポンサー企業が大幅に増える予定」というように、事業は順調に拡大基調を続けているようだ。その中で大きく2つ、今後の方向性として新たに注力するキーワードがある。その一つは”グローバル”、そしてもう一つが”大学構内”への展開だ。

前者は既に、インド(インド工科大学)にも出店しており、今後さらに加速していく予定だという。「実は海外では、日本以上に情報に飢えていることが多くあります。私たちが目指す”学生にもっと多くの選択肢を”というテーマは、海外でもより強く受け入れられる手ごたえを感じています」

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そして後者。直近、京都外語大学のキャンパス内に『知るカフェ』をオープンする契約を結んだが(オープンは2017年7月予定)、「今後は、キャンパス内に特化して店舗展開を進めていく」と柿本は語る。これまでの実績が信用となり、すでに多くの大学から依頼が来ているようだ。

説明するまでもなく、キャンパス内に店舗を開くことは、関わるすべての者にとって多くのメリットがある。例えば大学側にとっては、キャリアセンターなどの機能補完となる。さまざまな情報が集まり、多様な企業の関係者との接点が日常的に生まれることで、より実践的で密なる就活支援に繋がるからだ。

学生にとっても、さらに気軽に立ち寄りやすくなる場所となる。わざわざ出向かなくても、日々のキャンパスライフの中で無意識のインプットが多数生まれるはずで、それは当事者にとってはもちろん、広く社会的視点でも大きな意義を持つ。

そしてこれらの相乗で、柿本が目指してきたビジョンがよりリアリティ高いものになっていく。「就活というあらたまった時期だけでなく、ごく日常的に社会人と触れ合い自らのキャリアを自然と考える機会が増えること」その思いは、着実にカタチになりつつある。

プロフィール 
                                        
柿本 優祐(かきもと ゆうすけ)
株式会社エンリッション 代表取締役CEO

1987年生まれ、兵庫県神戸市出身。同志社大学商学部卒。ワークスアプリケーションズでの2年半の営業経験を経て、2013年10月、株式会社エンリッションを設立、代表取締役CEO就任。2014年に『知るカフェ』1号店を母校の同志社大学前に出店。現在、国内国外合わせて12店舗を展開。スポンサー企業は130社にのぼる。

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