ルナサンドに集まる大きな期待
見渡す限りの広大な砂地。青森県六ヶ所村にある掘削現場の姿は、古代文明の大型遺跡を思わせるほど美しく荘厳だ。「ここにご案内すると、『本当に砂は無くならないの?』とおっしゃっていた方々も、みなさん押し黙っちゃうんですよ」と、原田は現場を見ながら笑みを浮かべる。
この800万m3という豊富な埋蔵量とともに、ルナサンドの優位性を支えるのが、当地の砂の品質の高さだ。粒形が良く、大きさが揃い、塩分を含まない。まさに青森産「プレミアムブランド」の名にふさわしいハイスペックを武器に、同社は創業以来、急速な勢いで実績を拡大してきた。
例えば、日本中央競馬会(JRA)をはじめとする全国の競馬場では、ダートコースの殆どで同社の砂が採用されている。また日本を代表する名門コースをはじめ、数百にものぼるゴルフ場と取引をしており、そのシェアは圧倒的だ。
最近では建設・土木現場からの引き合いが強く、震災復興に伴う三陸の湾岸整備(埋め立て、地盤改良、漁礁造成など)や、東京オリンピック開催に関連した都市開発、高速道路などのインフラ整備など、官公庁や大手ゼネコンからの要請が高い。また造園・菜園向け、ろ過砂などの工場用向けなどにも、事業の裾野は広がりつつあるという。それに伴い、業績も毎年50~100%という驚異的な伸びを見せ、年商50億円の大台も視野に入ってきた。
ハイスペック、ハイスタンダードを当たり前に
このように、今でこそ順調に成長を続ける同社だが、実は原田のこれまでの歩みは苦難の連続だった。資本参加した青森の砂採取事業者に計画倒産され、投資したお金の殆どを失い、土地も施設も何もなく、残ったのは働いていた社員3名だけ。「その社員たちを何とかしなくては」から始まったのが、ルナサンドの歴史なのだ。
その後も、大手取引先の倒産による多額の貸し倒れなど、絶体絶命の危機は何度もあったが、それらを全て前向きに捉え、新たな事業に繋げ、成長への布石にしてきた。
同社の存在を広く世に知らしめたのは、大井競馬のトゥインクルレースでの実績だ。「ナイター競馬に何か新しい目玉を作りたい。例えば照明に映えてキラキラ煌めくような砂がないものか」。そんな主催者の希望に見事に応え、メディアから大きな注目を集めた。そしてその成果は、瞬く間に口コミとして全国に知れ渡ることになった。
この事例が象徴するように、ルナサンドは「砂の商流」を180度転換してきた。これまでの業界は「採取した砂をあるがままで受け入れてもらう」のが当たり前、そこに「お客さまが求める品質の砂を調達し提供する」という、顧客視点、マーケット発という姿勢を持ち込んだのだ。そして、「お客さまとの対話の繰り返し」を大切に、「お客さまとともに」ハイスペック、ハイスタンダードなマーケットを作りだしてきた。
語り続けること、人との縁を大切にすること
原田は座右の銘に「汝の夢を星につなげ」という言葉を掲げる。「目標を立てるなら、より高いところへ」というこの姿勢は、これまでの同社の取組みのあらゆる場面で貫かれ、確実に成果をもたらしてきた。
「私たちの取り組みは、ナイター競馬の砂や、ゴルフ場の集中購買の導入などに代表されるように、いつも初めてで無謀と言われるようなことばかり。ですから、『お客さまのため』を追求するほどに、立ちはだかるものが次々に出てきました。でもだからこそ、『一緒にやろう』と手を差し出していただく方にも同じようにたくさん出会うことができたのです」
自社の歩みを振り返る時、原田はいつも「人の縁に助けられて今がある」「人間関係にはとても恵まれてきた」と感謝を見せる。しかしそれは、原田自身が人との縁を大切にしてきたと言い換えることもできるだろう。
そして原田の真骨頂である粘り強さ。「今後取り組みたいこと、こうあるべきだと考えたことは、いつも周りに熱く語り続けてきました」という地道な積み重ねが、ある日突然“必然的な” 幸運として舞い込むことになる。このような、自らが歩んできた道のりは、社内でもしっかり共有していきたいと原田は語る。
「昨日できなかったことをできる自分、思いを具現化していく方法を、仕事を通して見せていきたい。高いところに目標を掲げ、強い気持ちをもって目の前のことをきちんと一つずつ丁寧に対処していく。であれば、無謀だと思えた目標も必ず実現できるものなんだということを」
砂という素材の可能性をとことん研究していく
この言葉通り、これまでのルナサンドの事業の広がりは目を見張るものがある。しかしさらなる拡大が期待できると原田はその可能性を見据える。
「ちょうど今、私たちは第2フェーズに差し掛かっている時期ではないかと考えています。全国に物流網を整備し、日本中どこの港にも船をつけられるようになりました。また集中購買の仕組み作りの中で、幅広い産地の方々との協力関係も生まれました。このような、これまで培ってきたネットワークが、ようやく真価を発揮できるタイミングになったと思うのです」
一方、ゼネコン、官公庁を始め、取引先の態様も広がりを見せ、それによって同社が提供できる「砂に求められること」を、さらに倍加させてもきた。
「震災復興の現場で実績を上げたことで、これまで『大量の砂を安定提供できるのか』と言われてきた懸念も払しょくできました。アサリの養殖現場の魚礁整備で成果が出たことで、安全安心への信頼も確立することができました。仕事の幅が格段に広がっているのを感じています」
今後の事業展開で原田がキーワードとして挙げているのが「アライアンスの拡大」という言葉だ。すでに多くの企業連携が進んではいるものの、その中身を分担から相乗に、さらに発展させていきたいのだという。
「違う産地の砂を組み合わせることで、より幅広いニーズにお応えすることができます。加工の処理の仕方で、今まで国産の砂ではできなかった、新たな用途が開発できる可能性もあります。さらには、他の素材と融合させることで、『砂でありつつ砂を超越した』全く新たな素材が生まれるかもしれない」。原田が思い浮かべる未来は、非常に柔軟かつ先進的だ。
「新素材としての砂の可能性を考えたり、誰とどんなことが実現できそうか想像したりすることはとても楽しいことです。砂というとても魅力的な素材に出会えたことに感謝しつつ、その魅力をさらに広げ、より多くの皆様にお届けできるような存在になることが、私たちの重要な使命だと思っています」
1965年生まれ、岩手県出身。マーケティング会社経営などを経て、青森の砂利業者の経営に資本参加。しかしその直後、計画倒産の憂き目にあい大きな痛手を負う。そこで残った社員の受け皿になるべく自ら起業を決意し、2001年株式会社ルナサンド設立。砂利採取販売業界における日本を代表する企業に育て上げようと日々格闘中。
株式会社ルナサンド
〒107-0051 東京都港区元赤坂1-1-7 オリエント赤坂モートサイドビル1F
TEL 03-6434-5560
設 立 : 2001年2月
資本金 : 9000万円
事業内容 : 砂・砂利採取業各種砂利販売
http://www.lunasand.co.jp/