「全国学生合同新歓2015」訪問レポート

合同新歓チラシ

通常、学生団体やサークルの新歓といえば、入学シーズンに校門前でそれぞれの団体がチラシを配り、新入生を奪い合うといった風景が目に浮かぶ。そういった、いわば競合関係である団体同士が一堂に会し合同イベントを開催するのは非常に画期的といえる。

しかし新入生の視点で見れば、これだけの団体をまとめて知ることができるのは非常に便利。それもオープンなスペースで話しこめるので、無理やり引っぱりこまれて先輩に囲まれるといった不安もない(いまもそういう風潮があるのかは分からないけれど)。非常にユーザー本位の企画だろう。

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この企画を運営するのは、「JASCA 一般社団法人全国学生連携機構」という組織。社団法人ではあるが、立ち上げ引っ張ってきたのは、学生自身だ。この新歓イベントだけではなく、学生と学生、企業と学生など、今までのしがらみや枠を超えて結びつく企画を次々立ち上げ、学生発の大きなムーブメントを確立してきている。

写真に写っているのは、実行委員長の久保直生君。青山学院大学国際政治経済学部に所属しており、まだ2年になったばかり。社団法人の理事であり、学生団体界隈では最大の有名人でもある、喜多恒介君の全面の信頼を受けての代表就任だという。

そんな彼の意気込みは、こちらのインタビューで確認できる。

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今回は、東京都立産業貿易センターの4-5階の2フロアでの開催。所狭しとテーブルが並べられ、(この会場でよく開催される)ビジネスマッチング交流会を彷彿させるイメージだ。

学生団体のジャンルは、「食・農業」「メディア」「震災復興」「政治」「オールジャンル」「デザイン」「交流スペース」「教育」(以上が4階に出展)。さらに、ビジネス、医療、国際協力、国際交流、旅系、海外インターンシップ、国際ビジネス、女性支援、地域活性(これらは5階)からなっていた。

中でも、国際協力、国際交流をはじめ、「国際」をテーマにした団体の数が抜きんでていた。
※全出展団体はこちらを参照

そこで、既知の学生が代表を務める団体を中心に、会場の声を拾いながら、幾つかのブースを回ってみた。が、選定はあくまでも偶発的で、廻れていないところにもっと面白い団体があったかもしれない。(パンフレットに、設立時、人数、主要企画くらいまとめてあると、絞って回りやすいのだが)

ちなみに、女性の写真が多いが、広報的なポジションに女性が多く、結果的にそうなっただけで、狙っていたわけではない。

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まずは日本を代表する学生団体と言っていい「AGESTOCK実行委員会」。数千人を集客する秋のイベントをはじめ、大きなエンタメイベントを長年にわたり実施している。ちょうどこの開催の翌日も、「AGESTOCK2015 in 赤坂BLITZ」が開催されたばかり。歴代の代表ともなじみが深い存在だ。写真は広報の丸山美咲さん。

活動の概要は、彩才兼備に登場する2名のインタビューでも詳しく紹介している。「村上ありささんインタビュー」 「佐分利侑右奈さんインタビュー」

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そして、田畑と森と海でつながる学生団体~いろり~。2013年11月に開催された「食と農林漁業大学生アワード」に参加して、初めてその存在を知ったのだが、学生がこれだけの規模の企画を開催できることに驚いた。その時の開催の模様はこちら

官公庁を巻き込んでいることも凄いことだが、それ以上に、全国の農や食に関する学生団体を横断的にネットワークし、巻き込んでいることに興味を持った。多くの場合、学生団体はお山の大将になりがちで、他の団体とも連携した大きな企画を実現するまでに至らないことが多いからだ。それを、社会的意義ある分野で実現してきた。

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そしてその時の「食と農林漁業大学生アワード」で最優秀賞を受賞したのが、こちらの「学生日本酒協会」。代表の伊澤優花さん(写真右から二番目)は、仙台を代表する老舗蔵元のお嬢さんで、日本酒にかける思いがとことんまで熱い子。海外に日本酒留学に行ったり、実家のお酒の海外販路の開拓を手掛けながら、この団体でもさまざまな企画を実施。最近は日本酒ブームの追い風もあり、イベントも活況なようで、今回の出展でも常時ブースに学生が集まっていた。

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こちらはNPO法人枠(社団法人)のリディラバ。「社会の無関心を打破する」をコンセプトに、現場へ気軽に足を運び、学びを通じた楽しさを提供するスタディツアーの実施や、なかなか情報にアクセスしにくい社会問題を身近に感じられるメディア「TRAPRO」の運営などを手掛ける。 代表の安部敏樹君は、3年ほど前の学生起業家コンテスト系イベントを軒並み最優秀賞で総なめ。独特の”押しの強さ”によるキャラクターも立っており、さまざまなメディアやイベントゲストなどにも登場する有名人だ。写真は広報部長の辻村美奈さん。

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理系女子大生コミュニティ凛は、まだ社会に「リケジョ」という言葉が知られるようになる前からスタートした、理系女子団体の老舗的存在。理系女子のネットワークをより広げるべく企業と連携し、様々なイベントに登壇したり理系女子に向けたイベントを開催したり。直近では5月24日に行われるイベント、WOMAN EXPO TOKYO内の「リケジョキャリア研究会」に登壇予定だそう。発足当時に関わらせてもらっているが、すでに運営体制は6期目。写真右が、6期新代表の猪爪舞花さん。

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「学生にもっと政治を身近に感じてほしい」そういう思いから、政治と美人をかけあわせたメディアを運営する政治美人。政治領域の活動は、どうしてもデリケートな部分が多いが、目を背けてはならない重要な領域。少しでも共感者を増やせるように努力をしてほしい。写真左が、代表の相川美菜子さん。右が広報 の杉山佳菜さん。

ここからは初面識の団体&人ばかりなので、少し説明(理解)不足になる点をご了承を

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まずこちらはインタビューサイト繋がリアンを運営する「インタビュー団体Lien」。学生運営のインタビューサイトは、多発する反面どうしても尻すぼみで短命になりがちだが、ここは頑張って長く続いている。最近は学生対象よりは社会人対象のインタビューが多いようなので、「忙しい経営者に余分な手間をかけさせないような、丁寧な文章作りを!」と、一言お節介をしておく。 写真右から二人目が、代表の吉田健一君。

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クリエイティブ領域からは、慶應意匠研究会。慶應とは名前はついているものの、美大生の参加も多いそう。デッサンも見せていただいたが見入るものも多い。デッサン力を磨きつつも、何か面白いアウトプットが生み出せるといいなと期待する。写真は代表の、岡聡煕君。

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国際交流部門からは、日中学生会議。毎年8月に日中の学生が一堂に会し、議論や共同生活を行うイベントが大きな目玉で、何かと感情の行き違いが見られる両国の相互理解を深めることを念頭に活動している。「少しでも知見を広げ共有したい」その言葉が印象だった。写真は、副委員長の乗上美沙さん。

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国際協力系から、国際協力学生団体BelaVirinoの二人。BelaVirino(ベラビリーノ)という耳慣れない言葉は、エスペラント語で”美しい女性”という意味だそう。途上国の女の子向けのお化粧体験を実施するなど、自分の「好き」(美容)を通じて、社会にも役に立ちたいという、その二つの思いを両立させた取り組みだ。とても女性らしいセンスの活動だと思う。

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こちらも女性主体で運営している、栄養学生団体【N】。卒業後に管理栄養士または栄養士を目指す学生で構成された団体。栄養講演会や料理教室など、イベントも頻繁に開催。「自分の経験値を上げながら、社会の役にも立っていきたい」そんな両立をめざしており、こちらも女性らしさ&学生らしさを感じる活動だ。

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医療系からは、日本薬学生連盟。すでに設立から17年目に入り、所属メンバーは 850名という。日本薬学生連盟という名前にふさわしい、大型の組織になっている。毎年3月に開催される「年会」が最大のイベントで、前回の京都開催は 延べ250名が参加。今年は東京開催で300名を目指しているそう。昨年末には、2013年に夏に開催したアジア会議の功績が認められ、「日本政府観光局国際会議開催貢献賞」を受賞したそうだ。

※すぐ隣にあった、医療学生ラウンジ訪問し損ねました。ここは、国内全域から医療系学生を集める大型イベント「Medical Future Fes」をはじめ、ビジコン、アプリ開発コンテスト、医療系ミスコンなど、次々に新たな企画を立ち上げてきた、非常に大きな存在感を誇る医療学生系団体。(田沢君、辻君、OBのみなさん、ちゃんと写真付きで紹介できなくてごめんなさい) 

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今回唯一高校生の出展が、「高校生団体Up to you」。今年3月に、渋谷の会場を貸し切って2000名規模の大型エンタメイベントを開催した、ツワモノ集団。当日は少しだけ会場にも顔を出したが、非常に本格的なもの。前幹部が卒業して、新たに3期目のスタートに入ったそう。写真には、代表&副代表など幹部陣揃い踏み。

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そして、何となくオレンジの法被に目が行き、(恐縮ながら)「最後に」「ついでに」よった、東大みかん愛好会。名前も名前だし、特に期待していなかったのだが、実は今回の最大のお気に入り。もともと「みかんを食べるサークルを作ろう」だけでスタートした団体で、それだけで10数名が集まったという。とはいえ「ただ集まっているだけでも・・・」ということで、だんだんと社会価値を持つことを考えた。

実は、以前は日本の果物というと、ミカンが一番だったという。でも今や海外からの輸入バナナに押され、差が開く一方だそうだ。そこで彼らは「日本固有のみかんを果物日本一にしよう!」と考えた。イベントで大量のみかんを配ったり、愛媛県松山で有名な「みかんジュースが出る蛇口」を用意したり、みかん酒飲み比べとか、みかん狩りとか、活動報告も「みかん」のオンパレード。

まだ若い頃は、「とりあえずみんなで楽しもう」から、「でもせっかく集まっているなら面白いことをしたい」そして「それなら社会に少しでも貢献できることを」。こういう順番で社会活動に目覚めていくのが、一番無理ない姿だと思っていて、この団体はまさにそれを体現している。肩ひじ張らずに”結果的に”社会価値を追求する、そういうある種のバカバカしさこそ、学生団体の取組みの真髄なのではないか。あらためてそう再考させられた団体だった。写真一番左が、代表の清原優太君。

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今回、この会場には非常に多くの団体と来場者が集まったが、実は学生団体の勢いはかなり弱まっている。そしてスタートアップ(ベンチャー)ブームであるようで、学生自身が個で勝負することも減ってきているのが実情だという。

その分「意欲がある人がどこに行っているのか」の答えにあげられるのがインターンだ。もちろん将来役に立つスキルを早くから身に付けるのも大事なことだが、でも「何も役に立たないかもしれないこと」を頑張るのも、かなり大事なことだと思う。

時代が違うと言われればそれまでかもしれないが、自分たちの世代から見ると、後者の方がより学生らしさを感じてしまう。(もっともつい最近までは、ベンチャーのインターンの方が亜流だったので、そっちのほうが「何も役に立たないかもしれないこと」だったのだが)

いずれにしても、真面目でもバカでも精いっぱい頑張れていれば、それは全てが身になっていくこと。年を取ってこそ痛感する、まだ将来が長い若い人たちの持つ最大の特権。「しがらみが無く、好きな人とだけ行動を共にできる学生の時期に、その時しかできなさそうなことを精一杯やり遂げる」。そんな機会を積極的に作っていく人が増えると嬉しいし、今回の「JASCA」のように、そういう意欲のある人を、そそのかし成長させるチャンスを作れる先輩が増えていくと素敵だと思う。

(記: ダイヤモンド経営者倶楽部 北村)































































































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