火怨 北の燿星アテルイ

当書は、征夷大将軍坂上田村麻呂と蝦夷の長アテルイの戦いを、アテルイ側の視点から描いた長編歴史小説である。

高橋克彦といえば、1993年に渡辺謙が主演したNHK大河ドラマ「炎立つ」の原作者であり、「炎立つ」「火怨」「天を衝く」は高橋克彦の“陸奥三部作”と呼ばれている。この本は創業から3年ほど経って、漸く本を読む余裕が少しできた頃に読書再開のきっかけになった本である。

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読み始めたら、あっという間に引き込まれてしまって睡眠時間を削って読みふけってしまった。その後、高橋克彦氏の歴史小説を総て読破したのは言うまでもない。小説の舞台が東北ということもあり、北の大地に生まれた人間のひいき目も多少はあるかもしれないが、男たちの生きざま、絆、友情に誰しも胸を熱くする小説であることは間違いない。自身にとっても、当時置かれた苦しく厳しい状況を投影し、涙していたのかもしれない。

平安時代初期、当時東北地方に住んでいた人々は蝦夷と呼ばれ、東北地方で金が多く採れることを知った当時の朝廷からの侵略を英知と勇気と情熱を持って退け続けた。軍勢は朝廷軍よりもはるかに少ない蝦夷軍。しかし、リーダー阿弖流為と、その情熱に感化され、戦でいくつもの奇跡を起こす天才軍師母礼と武将たちの熱いやり取りがある。さらに、阿弖流為をライバルと認め、戦を挑む坂上田村麻呂との敵・味方を超越した畏敬の念。東北地方に生まれた人間には絶対に読んでほしいものである。

自分自身の先祖が、辛く厳しい東北の気候を真摯に受け入れることのできる忍耐強さ、少ない人数のなかで圧倒的な人数を誇る朝廷軍を退けていた勇気と戦略性を持っている。歴史小説とはいえ、史実も含めて考えれば、こんなに心が震えることはない。東北人にとっては、本当に東北人として生まれてよかったと思わせてくれる本である。

東日本大震災が発災し、多くの人々が苦しんでいるなかでも、天を恨まず「それでもなお」と歩みを進める東北の多くの人々。次代のリーダーは、この国難を乗り越えて生きていく東北人のようにありたいと強く思う。

著者 高橋 克彦 出版社: 講談社
発売日: 2002/10/16、文庫本:504P  823円

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